なぜ不動産が相続対策になる?事例は?方法や注意点、トラブル
なぜ不動産が相続対策になるのか?事例や方法や注意点やトラブルについてご紹介
不動産は相続対策になると言われますが、どうしてでしょうか。
不動産に対するイメージからすると、不動産は高額な財産であり、不動産をたくさん持っていれば多額の相続税を払うことになりそうです。
ですが、1億円を現金や預貯金で所有しているケースと、その一部を不動産としているケースでは相続税額に差が出ます。
たとえば、現金5,000万円、時価評価で5,000万円の不動産なら、合計財産額は1億円ですが、現金1億円の場合より相続税が安くなる可能性が高いです。
それはなぜなのでしょうか。
この記事では、なぜ不動産が相続対策になるのかを、事例の紹介や注意点、トラブルなどを紹介しながら紐解いていきます。
※本ブログに掲載されている事項は、情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。
最終的な投資決定は、お客さまご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
不動産は現金より相続税評価額を落とせる可能性が高い
相続税を計算するうえでは、故人が所有していた財産の価値を評価しなくてはなりません。
現金や預貯金は日本円であれば、その金額そのままが評価額になります。
これに対して、土地や株などは価値が変動する資産です。
たまたま亡くなった日や時期において、不動産バブルであったり、株式市場が大きく高騰したり、下落すると、死んだ日によって相続税額に大きな差が生じかねません。
また、生前に3,000万円で購入した土地が人気のエリアにあるために、5,000万円まで跳ね上がっていたとします。
だから、5,000万円の価値があるとして、高額な相続税を負担する能力があると言えるでしょうか。
現金であればすぐに決済手段として使えるので、納税に充てられます。
ですが、不動産はいかに時価評価が高いとしても、実際にその価格で売れるとは限りません。
しかも、相続時に所有しているのは現金のようにすぐには支払いに使えない不動産です。
そこで相続税法では、現金以外の財産について、その財産の特徴や性質に応じた相続税評価制度を設けています。
それによれば、土地は相続税路線価または地域によって固定資産税評価額、建物は固定資産税評価額で評価されます。
路線価という言葉は聞いたことがあるでしょう。
毎年7月に全国の路線価が国税庁によって発表されています。
固定資産税評価額は各自治体が決定しており、3年に一度評価替えが行われるのです。
この点、相続税路線価は国土交通省が不動産市場の値動きや経済情勢などをもとに毎年発表している公示価格の7~8割ほどに抑えられます。
固定資産税評価額も、公示価格の6~7割程度です。
公示価格は時価に近い価格ですが、相続した不動産はその6~8割程度の評価に抑えられるということです。
たとえば、1億円の現金は1億円の評価ですが、1億円の不動産は6,000万円~8,000万円程度に抑えられる可能性があります。
そのため、現金や預貯金の額が必要以上に多いという方は、生前に現金や預貯金を使って、キャッシュで不動産を買っておくと相続税の軽減対策になるのです。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、故人の自宅である宅地を一定の要件を満たす相続人が相続すると、相続税評価額が330㎡の範囲まで80%減額できる特例です。
アパートやマンションを建てて賃貸経営をしている土地なら、貸付事業用宅地として、200㎡まで相続税評価額を50%減額できます。
たとえば、280㎡で相続税評価額が2,000万円の自宅の土地は400万円で評価されるのです。
かなりの大幅減額になり、相続税も負担も抑えられます。
ただし、この特例の要件を満たすには、一定の要件を満たす必要があります。
故人の配偶者であれば、自宅を相続しただけで適用が受けられますが、子どもなどの場合は注意が必要です。
基本的にその自宅に同居しており、相続税の申告期限まで所有かつ居住していなくてはなりません。
別居の相続人や同居していたとしても、相続してすぐに売却してしまうと80%の減額が受けられません。
小規模宅地の特例の適用を受けたいなら事前対策が必要です。
別居だった方は、実家に戻って一緒に暮らすこと、亡くなられた後もすぐに売却することや賃貸せず、相続税の申告期限までは住み続けることです。
不動産を賃貸に出して相続税評価額を下げる
現金を不動産に換えておくことで、相続税評価額を下げることができるとご紹介しました。
すでに自宅をお持ちの方が不動産を買うなら、別荘にすることや遊休地として放置するのではなく、その不動産を使って賃貸経営するのもおすすめです。
豊富な現金がある方なら、土地を買ってアパートやマンションを建築して現金を減らし、そこまでの現金はない方なら中古のアパートなどを買うといった方法もあります。
賃貸住宅の相続税評価額は、自分で自由に使える宅地その他の土地に比べて評価額を下げてもらえます。
貸して賃料を得て儲けているのにと思われそうですが、自分で土地が利用できないという負担をしているためです。
都道府県ごとに設定されている借家権割合と地域ごとに設定されている借地権割合、さらにどのくらい貸しているかの賃貸割合によって減額が受けられます。
賃貸用地の相続税評価額=自宅用地の相続税評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)で計算できます。
賃貸割合は、たとえば6室あるアパートで6室満室なら減額される割合が高くなりますが、3室が空室となれば減額の割合が半分になってしまうので注意が必要です。
相続税評価額の減額を目一杯受けたいなら、空室を作らず満室経営が理想です。
参考:借地権の評価-国税庁
事例
自宅用地である場合の相続税評価額:3,000万円
借地権割合:50%
借家件割合:30%
賃貸割合:10部屋中8部屋が入居中→8/10→4/5
3,000万円×(1-借地権割合50%×借家権割合30%×賃貸割合4/5)=2,640万円
3,000万円-2,640万円=360万円
こちらの事例では相続税評価額が下がりました。
注意点
相続対策として土地を買い、アパートやマンションを建築して、入居者を募集するとなれば、対策を企画してから入居者が入るまでに1年から2年程度の歳月を要することも少なくありません。
高齢者や闘病中といった方が新たに賃貸経営をしようとすれば、入居者がまったく入らないうちや満室にならない前に亡くなってしまうおそれがあります。
入居者ゼロでは相続税評価額を減少させる効果が得られません。
賃貸経営による相続対策をしたい場合には、早めの計画がおすすめです。
一方で、立地が良く家賃も高く設定でき、常に満室の経営ができる場合、賃料収入が安定的に入り、減らしたはずの現金が増えてしまうおそれがあります。
賃貸経営による相続対策は、事前のシミュレーションをはじめ、賃貸経営中も常にキャッシュフローや将来的なシミュレーションをしておくことが大切です。
計画当初に比べて現金が増えそうな時には、使わない不動産を買うなどして現金の価値を下げるなど次の手段を講じましょう。
不動産相続を巡るトラブル
相続税の負担額を下げるには、現金を不動産に換えてしまうのが一つの対策です。
一方、相続人間の争いを防止する争族対策としては、不動産より現金や生命保険のほうが安心の場合があります。
それは、不動産という財産の特徴によるものです。
第一に、不動産は現金のように簡単に分割ができません。
相続人が多いほど、スムーズに遺産分割ができなくなるおそれがあります。
不動産は相続税の負担を減らしてはくれても、相続はしたくないと思う方も多いです。
相続しても使えない、地方の不動産で簡単に売れない、売るのに時間がかかるなどの理由でいやがられます。
しかも、所有しているだけで毎年固定資産税の支払いが必要となり、持ち出しが多くなります。
固定資産税を払い続ける余裕の資金がないと相続しても負担になるだけです。
第二に、換金がスピーディーにできないことも原因です。
不動産を相続しても、使わないから売却したい、現金に替えたいと思っても、すぐには換金できません。
不動産会社に相談をして、宣伝広告などをして買い主を探し、条件交渉をして契約に至ったとしても、ローンの審査が通らず、振り出しに戻るリスクもあります。
不動産相続を巡るトラブルとしてよくある事例を見ていきましょう。
相続人が複数いるケース
相続人として子どもが3人おり、それぞれ独立して家庭を持っています。
相続財産は5,000万円の自宅と1,000万円の預金だけだったとしましょう。
この際、法定相続分によれば2,000万円ずつの相続権があります。
平等を徹底するなら、自宅を3人で共有し、預金を約330万円ずつ分けるという方法もあるでしょう。
ですが、自宅を共有しても一緒に住めるわけではなく、現実的ではありません。
多くのケースでいずれか1人が自宅を相続し、残りの2人は預金を500万円ずつ分けるといった遺産分割が行われます。
ですが、残りの2人から『1,500万円ずつ払え』と要求されるトラブルが起きることも多いです。
5,000万円の自宅を相続する代わりに1,500万円ずつ渡せば、3人それぞれ2,000万円ずつの財産を得たことになるからです。
ですが、自宅を相続しても1,500万円ずつ2人分、3,000万円の現金を持っているとは限りません。
払えないと揉めた場合や急いで自宅を売却した結果、売り急ぎで4,000万円でしか売れなかったと損を被ることもあります。
めぼしい財産が不動産しかない場合、その不動産を相続する人を想定して生命保険金の受取人にしておくと争族対策の財源に使えます。
生命保険は相続財産にはならず、受取人固有の権利となるからです。
しかも、非課税枠があり、500万円×法定相続人の数だけ減額が受けられます。
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まとめ
不動産は現金に比べ、相続税評価額が低くなるのが一般的です。
路線価または固定資産税評価額で評価されるので、公示価格の6~8割程度に抑えることができます。
また、小規模宅地の特例の要件に該当すれば、50%から80%の大幅減額も可能です。
賃貸経営を行った場合、入居率にもよりますが、借地権割合と借家権割合の分、相続税評価額の減額が受けられます。
一方で、メインの相続財産が不動産だけである場合や相続人が複数いると争族に発展することがあります。
不動産は分割しにくく、換金しにくいためです。
※本ブログに掲載されている事項は、情報の提供を目的としたものであり、投資の勧誘を目的としたものではありません。
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令和2年度第3次補正 事業再構築補助金により作成