この記事の要点
- 不動産の値段も動いています。ただ、株のように毎日・毎秒は表示されないので、見えにくいだけです。
- 不動産には、空室・金利・修繕・売りにくさなど、株とは違う心配があります。「値動きが見えない=安全」ではありません。
- 大切なのは、自分がどんな心配となら付き合えるかを知ることです。蓮さんの場合は、「毎日見える値段」が苦手でした。
「長期だから気にしない」はずが
2023年、AI ブームで株の評価額が大きく増えた蓮さんは、「長期だから、値動きは気にしない」と決めていました。
ところが2024年9月3日(米国時間)、蓮さんの持っていた NVIDIA の株は1日で9.5%下がります。米国の会社としては、1日に失った時価総額が過去最大だったと報じられました。米国の株式市場が開くのは日本時間の夜なので、値段が下がっていくのは、ちょうど日本の夜中です。蓮さんは布団の中で、夜中に何度も株価を確かめ続けました。
マンガ3コマ目の語り「売ったら上がる。買ったら下がる。」は、株をしている人なら一度は思ったことがあるかもしれない、自分へのぼやきです。
数字で見る:不動産の値段も動いている
国土交通省の「不動産価格指数」で、取引されたマンション(区分所有)の価格の動きを見ると、2010年を100として、全国では2025年に約218になりました。15年ほどで2倍を超えています(東京都では約227。どちらも編集部が月次の値を年ごとに平均した値)。
- 100.0 2010年
- 102.6 2012年
- 113.1 2014年
- 128.8 2016年
- 141.5 2018年
- 153.4 2020年
- 165.1 2021年
- 182.0 2022年
- 191.4 2023年
- 202.5 2024年
- 217.8 2025年
単位:指数
国土交通省の不動産価格指数(住宅)の月次の原系列を、編集部が年ごとに平均した値(公式の年平均ではありません)。取引された物件の価格の指数で、個々の物件の値段や、家賃・空室・修繕のことは表しません。2025年12月分は速報値です。
出典:国土交通省「不動産価格指数(住宅)」
ただし、このグラフを「不動産は上がる」と読まないでください。この指数は、築年や広さなどの違いをならして計算した市場全体の値段の水準です。自分の部屋は毎年1歳ずつ古くなるので、持っている部屋がこの線のとおりに上がるわけではありません。過去の上昇は、これからの上昇を約束しません。
また、年平均では上がり続けていても、月ごとに見ると、前の月より下がる月もあります。季節調整した指数の前月比は、2016〜2025年の全国で、大きい月にはおよそ±3%動いていました(編集部の集計)。
ただ、この数字が公表されるのは、およそ3か月後です。しかも公表のあと3か月は改訂されます(2026年1〜6月分は、国土交通省の算出の不具合で公表が延期されています)。株のように、今日の値段を今日のうちに知ることはできません。値段が動いていないのではなく、見えにくいのです。
そして、見えにくいこと自体が、不動産のリスクでもあります。見えないあいだも値段は動き、売ると決めてから買い手が見つかるまでには数か月かかることもあります。ローンで買っていれば、値下がりの影響は自己資金に対してさらに大きくなります。たとえば2,000万円の部屋を、1,000万円を借りて買った場合、部屋の値段が10%(200万円)下がると、自分で出した1,000万円に対しては20%の目減りです(第1話で見たとおり、不動産は借りて買うことが多いのです)。
一方で、株は1日でも大きく動きます。金融庁の分析では、2024年8月5日、日経平均株価は1日で12.40%下がり、過去2番目の下落率でした(その後、株価は回復に向かいました)。株も長い目では上がった時期があり、不動産も下がった時期があります。違うのは、動きが見える速さです。
数字で見る:値下がりが不安なのは、蓮さんだけじゃない
日本証券業協会の2024年の調査で、株を持っていない人に買わない理由を聞くと、「値下がりの危険がある」が21.4%、「株価の動きなどに神経を使うのが嫌」が15.8%でした。
全国の18歳以上で、株式を持っていない人(5,476人)の複数回答。主な5項目を抜き出しました。2024年6〜7月の調査です。
出典:日本証券業協会「2024年度 証券投資に関する全国調査(個人調査)」
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の2025年の調査でも、「10万円を投資すると、半々の確率で2万円の値上がり益か、1万円の値下がり損が出る」という場面で、72.8%の人が「投資しない」を選びました。平均すれば得をする計算でも、損をする怖さのほうが大きく感じられる人が多い、ということです。
値動きが気になるのは、弱さではなく、多くの人に共通する感じ方です。
値段が「いつ・どう」分かるか
第1話では、株と区分マンションの「お金の出し方」の違いを見ました。今回は、値段がいつ・どう分かるかの違いです。
株(上場株式)
いつでも、すぐ分かる
- 市場が開いているあいだ、値段が刻々と表示される
- 米国株は、日本の夜中に動く
- アプリの通知で、見るつもりがなくても目に入る
- 売ると決めれば、市場が開いていればその日のうちに売れることが多い
区分マンション
売るか、査定を取るまで分からない
- 自分の部屋の値段は、査定を取るか売りに出すまで分からない
- 市場全体の動きの統計は、およそ3か月後に出る
- 毎月目に入るのは、値段より家賃の入金や管理の報告
- 売ると決めてから、買い手が見つかるまで数か月かかることもある
一般的な例です。見えやすいことと、値下がりしにくいことは別です。どちらが有利かは、その人の資産・収入・目的によって違います。
値動きとの付き合い方
株でも不動産でも、値動きや心配とうまく付き合うために、一般によく言われる工夫があります。
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見る回数と時間を決める
毎日・毎時間ではなく、週に一度など、確かめる日を決めておく。米国株は日本の夜中に動くので、通知を切る、スマホを寝室に持ち込まないなど、睡眠と仕事の時間を守るしくみも一緒に。蓮さんは、これができませんでした。
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生活費は、値動きと関係ないところから
近いうちに使うお金(生活費、数年以内の支出)は、値下がりしても困らないところに置く。値下がりの夜を越えられるかは、その月の生活費が値動きと関係ないところから出ているかで、大きく変わります。
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悪いときにどうするかを、先に決めておく
慌てて売る・買うを避けるために、値下がりしたときの方針を、落ち着いているときに書いておく。不動産なら、空室が3か月続いたら、金利が1%上がったら、毎月いくら給料から出すことになるかを先に計算しておく。
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一つにまとめすぎない
持っているものを一つにまとめると、その値動きがそのまま家計に響きます。分けて持つ考え方もあります。
一般的な考え方の例で、特定の商品や売買を勧めるものではありません。どの方法が合うかは、人によって違います。
注意したいこと
- 「値動きが見えない」は「値下がりしない」ではない:不動産の値段も、景気・金利・地域・建物の古さで動きます。売るときに、思ったより安くなることもあります。ローンで買った場合、売値がローンの残りを下回ると、差額を手元のお金で埋めないと売れません。ときどき査定とローンの残高を見比べておくと安心です。
- 不動産には、株にない費用と手間がある:管理費・修繕積立金・税金、入居者の募集や修繕の判断など、持っているあいだにかかるものがあります(第1話)。
- 向き・不向きは人それぞれ:値動きが気にならず、株のほうが合う人もいます。蓮さんのように、別の心配のほうが付き合いやすい人もいます。
次の話へ
株の値動きについていけなかった蓮さんは、不動産に目を向けます。次の話は、蓮さんが不動産投資に出会ったきっかけ。身近に、部屋を貸している人がいたのです。
出典
- 国土交通省「不動産価格指数(住宅)」掲載ページ(令和7年12月分、2026年3月31日公表。2026年1〜6月分は公表延期中。確認日:2026-10-21)
- 日本証券業協会「2024年度 証券投資に関する全国調査(個人調査)」調査ページ(2024年10月16日公表、確認日:2026-10-21)
- 金融経済教育推進機構「金融リテラシー調査2025年」調査ページ(2026年3月27日公表、確認日:2026-10-21)
- 金融庁「FSA Analytical Notes(2025.1)vol.1 2024年8月上旬の日本株市場の急激な相場変動に関する分析(要旨)」PDF(2025年1月8日、確認日:2026-10-21)
- Business Standard(Reuters 配信)「Nvidia suffers record $279 billion loss in market value as Wall St drops」記事(2024年9月4日、確認日:2026-10-21)