この記事の要点

  • 賃貸の家賃は1部屋ずつ違います。同じマンションでも、階・間取り・日当たり・室内の状態で変わります。「相場」は似た部屋の家賃の目安で、ぴったり決まった値段ではありません。
  • 相場より安い理由はいろいろです。空室を早く埋めたい大家さんの事情、引っ越しの少ない時期、部屋の状態や設備、契約の条件などがあります。データでは、募集が長引いた部屋ほど家賃を下げていました。
  • 安い理由は、物件概要と内見で確かめましょう。理由が分かって納得できれば、相場より安い部屋はお得な選択肢になります。

「相場」は、似た部屋の家賃の目安

マンガの桜ちゃんは「相場より2万円も安い」部屋を見つけました。でも、不動産の家賃は、まったく同じものがない「1点もの」です。

国土交通省の不動産鑑定評価基準も、マンションの部屋の価格を決める要因として、階や位置、日当たりや眺め、室内の仕上げ、広さや間取りなどを挙げています。エステートテクノロジーズが東京都の賃貸の募集を調べたところ、同じ建物・同じ間取り・ほぼ同じ広さの部屋でも、階が違うと家賃は中央値で4.2%違い、5%以上違う組み合わせが44%ありました。3つ以上の階で比べられる組み合わせでは、約8割で上の階ほど家賃が高くなっていました。

「相場」は、こうした似た部屋の家賃のだいたいの水準です。相場より安いのは、それだけで「おかしい」わけではありませんが、何か理由がないかは確かめたいところです。

安い理由の例

相場より安くなる理由の例

貸す側の事情

部屋に問題があるとは限らない

  • 空室が続いて、早く入居者を決めたい
  • 引っ越しの少ない時期に募集している
  • 近くに新しい物件ができた

部屋や建物の条件

内見で確かめる

  • 低い階、日当たりや眺め、間取りのクセ
  • 築年が古い、設備が古い(第9話)
  • リフォームや共用部の管理の状態

契約の条件

物件概要と契約書で確かめる

  • 契約期間に決まりがある(次の話)
  • 短期で解約すると違約金がかかる
  • 更新料や退去時の費用の特約

理由は一つとは限りません。不動産会社に「どうしてこの家賃なのか」「いつから募集しているか」を聞いてみるのも手です。

数字で見る:募集が長引くと、家賃を下げる部屋が増える

マンガの蓮さんが「空室が続いて、家賃を下げたのかもね」と言ったのには、データの裏付けがあります。エステートテクノロジーズが、東京都で2025年10月〜2026年6月に始まった賃貸の募集を、同じ部屋の重複をまとめて調べたところ、1か月以内に終わった募集で家賃を下げていたのは1.6%でしたが、3か月を超えた募集では28.3%が家賃を下げていました。

募集の期間別、家賃を下げて終わった割合(東京都)
  • 1か月以内 1.6%
  • 1〜2か月 14.7%
  • 2〜3か月 21.9%
  • 3か月超 28.3%

東京都の賃貸の募集(同じ部屋の重複をまとめ、期間内に始まって終わった約98万件)。募集の期間は掲載が確認できた期間で、空室だった期間そのものではありません。長く掲載されるほど、家賃を見直す機会も増えます。
出典:エステートテクノロジーズ調べ

なお、30万円は家賃収入が入らない分の例で、ローンの返済や管理費など、貸す側の支出はこれとは別にかかります。

空室は珍しいことではありません。総務省の住宅・土地統計調査(2023年)から計算すると、賃貸用の住宅のうち、借り手を待っている賃貸用の空き家は全国で18.6%、東京都で15.1%でした。

賃貸用の住宅に占める賃貸用の空き家の割合(2023年)
  • 全国 18.6%
  • 東京都 15.1%

賃貸用の空き家 ÷(居住世帯のある借家+賃貸用の空き家)で計算した値。公営住宅やURなども含みます。不動産会社がいう「空室率」とは定義が違います。
出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査」第1-1表・第3-1表から計算

引っ越しの多い時期、少ない時期

賃貸には季節があります。総務省の住民基本台帳人口移動報告で2025年の月別の引っ越し(市区町村をまたぐ移動)を見ると、3月が約90.5万人、4月が約68.4万人と飛び抜けて多く、この2か月で1年の約3割を占めていました。

月別の引っ越しの人数(市区町村間の移動、2025年)
  1. 32.7 1月
  2. 35.7 2月
  3. 90.5 3月
  4. 68.4 4月
  5. 38.3 5月
  6. 37.2 6月
  7. 39.8 7月
  8. 34.9 8月
  9. 36.8 9月
  10. 38.0 10月
  11. 31.0 11月
  12. 35.8 12月

単位:万人
全国の市区町村間移動者数。同じ市区町村の中での引っ越しは含みません。賃貸の引っ越しだけの数ではありません。
出典:総務省「住民基本台帳人口移動報告 2025年結果」第7-1表

引っ越しの多い春は部屋が決まりやすく、少ない時期は空室が続きやすい傾向があります。時期をずらして探すと、条件の合う部屋が見つかることもあります。

安い部屋は、内見でここを確かめる

  1. 募集の経緯

    見るところ:いつから募集しているか、家賃を見直したかを不動産会社に聞く

    気にしたいサイン:長く空いている理由が説明されない

  2. 日当たり・眺め・音

    見るところ:窓の向き、隣の建物との距離、線路や大通りの音

    気にしたいサイン:昼でも暗い、窓を閉めても音が大きい

  3. 室内の状態

    見るところ:水回り(キッチン・浴室・トイレ)の古さや汚れ、カビ、においを、見て・かいで確かめる

    気にしたいサイン:においが残っている、水回りが古いまま

  4. 建物の管理

    見るところ:エントランス・廊下・ゴミ置き場がきれいか(第1話)、掲示板の注意書き

    気にしたいサイン:ゴミが散らかっている、注意の貼り紙が多い

  5. 物件概要の欄

    見るところ:構造(第7話)、階と窓(第8話)、築年(第9話)、契約期間(次の話)

    気にしたいサイン:見ていない欄がある

  6. 契約の条件

    見るところ:短期解約の違約金、更新料、退去時の費用の特約

    気にしたいサイン:安い代わりに、別の費用が高い

次の話へ

相場より安い理由には、契約の条件が関わることもあります。次の話では、物件概要の「契約期間」の欄を見ていきます。

出典

  • エステートテクノロジーズ調べ:東京都の賃貸の募集情報(2025年10月〜2026年9月、同じ部屋の重複をまとめた住戸単位)。募集時の情報で、契約の情報ではありません。
  • 国土交通省「不動産鑑定評価基準」平成26年5月1日一部改正 PDF(p.5・p.53、確認日:2026-10-13)
  • 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」住宅及び世帯に関する基本集計 第1-1表・第3-1表(2024年9月25日公表、確認日:2026-10-13)
  • 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」第7-1表、結果の概要(2026年2月3日公表、確認日:2026-10-13)