この記事の要点

  • 物件概要の「契約期間」に「定期借家」とあれば、決めた期間が来たら契約は終わり、更新はありません。ふつうの賃貸(普通借家)は、更新して住み続けるのが原則です。
  • 続けて住めるかは、貸す側と借りる側が合意して「再契約」できるかしだいです。「再契約不可」「再契約可(再契約料あり)」など、物件ごとに条件が違います。
  • 定期借家を選ぶなら、何年住みたいか、ペットと引っ越すことになっても大丈夫かを考えてから。契約前には、更新がないことを説明する書面を受け取って確かめましょう。

「定期借家」とは

マンガの桜ちゃんは、これまでの話で覚えた欄(条件欄・構造・築年)を自分で確かめ、相場より安い部屋に「完璧です!」。でも、蓮さんの「契約期間は?」で固まってしまいました。

定期借家(定期建物賃貸借)は、契約で決めた期間が来ると、更新されずに契約が終わる賃貸借です(借地借家法第38条)。国土交通省も「契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了する制度」と説明しています。

桜ちゃんと同じく「知らなかった」人は多いようです。国土交通省の住宅市場動向調査(三大都市圏で民間の賃貸住宅に入居した世帯)では、定期借家制度を「知らない」人が54.4%でした。

定期借家制度を知っているか(民間賃貸住宅に入居した世帯)
  • 知っている 17.1%
  • 名前だけは知っている 24.6%
  • 知らない 54.4%
  • 無回答 3.9%

三大都市圏で2024年4月〜2025年3月に民間賃貸住宅に入居した世帯(590世帯)への調査。
出典:国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書」問22

実際に定期借家で入居した世帯は、同じ調査で2.0%でした。数は多くありませんが、出会ったときに気づけるようにしておきたい欄です。

普通借家との違い

普通借家と定期借家の違い

普通借家

更新して住み続けるのが原則

  • 期間が来ても、更新して住み続けられる
  • 貸す側が更新を断るには「正当な事由」が必要
  • 物件概要では「普通借家」「2年(更新あり)」などと書かれる

定期借家

期間が来たら終わる

  • 決めた期間が来たら終わり、更新はない
  • 続けて住むには、双方の合意で再契約(新しい契約)
  • 物件概要では「定期借家 2年」「再契約可/不可」などと書かれる

普通借家は借地借家法第26条・第28条、定期借家は第38条。再契約では、事前の説明など最初の契約と同じ手続きをもう一度行います。
出典:借地借家法(e-Gov法令検索)、国土交通省「定期建物賃貸借」パンフレット

定期借家のルール

定期借家には、借りる人を守るための決まりもあります。

定期借家の契約から終わりまで
  1. 契約の前:書面で説明を受ける

    貸す側は、更新がなく期間が来たら終わることを、契約書とは別の書面を渡して説明しなければなりません(借りる人の承諾があれば電子データでも可)。この説明がないと、「更新がない」という定めは無効になり、普通借家として扱われます。

  2. 契約:書面(または電子)で結ぶ

    定期借家は書面で契約します。公正証書である必要はありません。1年未満の短い期間でも結べます。

  3. 途中で解約したくなったら

    居住用で床面積200㎡未満の部屋なら、転勤・療養・親族の介護などのやむを得ない事情があれば、申し入れから1か月で解約できます。これより借りる人に不利な特約は無効です。

  4. 終わる前:通知が届く

    期間が1年以上なら、貸す側は期間が終わる1年前から6か月前までに、契約が終わることを通知します。通知が遅れた場合は、通知の日から6か月は住み続けられます。

  5. 期間が来たら:退去か再契約

    双方が合意すれば再契約できます。再契約は新しい契約なので、家賃などの条件が変わることもあります。

借地借家法第38条(令和4年5月18日施行の改正で電子化が可能になり、項の番号が変わっています)。

国土交通省のパンフレットは、定期借家の活用例として、転勤中の留守宅、建て替えや大規模修繕の予定がある建物、ペット共生住宅などを挙げています。物件の事情によって、期間や再契約の考え方が違います。

「定期借家なら安い」とは限らない

前の話(第10話「空室はこわい」)で見たように、相場より安い理由はいろいろあります。定期借家は、期間が決まっている分だけ家賃が抑えめになることもありますが、いつもそうとは限りません。募集情報を見ると、「再契約可(再契約料:新しい家賃の1か月分)」のように、再契約のときに費用がかかる例もあります。家賃だけでなく、期間・再契約の条件・費用をまとめて比べましょう。

契約の前に確かめたい5つのこと

  1. 契約期間の欄

    見るところ:「定期借家」か「普通借家」か。期間は何年か

    気にしたいサイン:契約期間の欄を見ていない

  2. 再契約の条件

    見るところ:再契約できるか(可・不可・相談)、再契約料や家賃の見直しはあるか

    気にしたいサイン:「再契約不可」なのに長く住むつもりでいる

  3. 期間が決まっている理由

    見るところ:転勤から戻る予定、建て替え予定など、貸す側の事情

    気にしたいサイン:理由が説明されない

  4. 途中解約の条件

    見るところ:解約の申し入れの期間、短期で解約したときの違約金

    気にしたいサイン:やむを得ない事情以外の解約に、重い違約金がある

  5. 事前の説明の書面

    見るところ:更新がないことを説明する書面を受け取ったか

    気にしたいサイン:契約書の中に一行あるだけで、別の書面がない

ペットと暮らすなら、引っ越しの回数も考えて

マンガのめめちゃんは「猫は引っ越しが苦手!」と言っていました。住む場所が変わると、猫が落ち着くまでに時間がかかることもあります。定期借家で2年ごとに引っ越すことになると、そのたびにペット可の部屋を探し直す手間もかかります(第4話)。何年くらい住みたいかを先に決めておくと、定期借家が合うかどうか判断しやすくなります。

逆に、「2年だけ住めればいい」「数年後に引っ越す予定がある」なら、定期借家は条件の合う選択肢になります。

出典

  • 借地借家法 第26条・第28条・第38条 e-Gov法令検索(確認日:2026-10-13)
  • 国土交通省「定期建物賃貸借」Webページ、「定期建物賃貸借 Q&A」Webページ、パンフレット《大家さんのための》定期建物賃貸借契約(令和6年11月)PDF(確認日:2026-10-13)
  • 国土交通省「定期賃貸住宅標準契約書」平成30年3月版 PDF(第2条・第18条、確認日:2026-10-13)
  • 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書」PDF(問6・問22、確認日:2026-10-13)