この記事の要点

  • 物件概要の「駅徒歩◯分」は、道のり80mを1分として計算した数字です。1分未満の端数は1分に切り上げます(不動産の表示に関する公正競争規約施行規則)。
  • 計算は地図の上で行い、信号や踏切の待ち時間、駅前の混雑、坂道や階段は入っていません。雨の日や通勤の時間帯は、表示より時間がかかることがあります。
  • 駅からの分数は家賃にも関わります。表示は目安と考えて、自分が帰る時間帯・天気で一度歩いて、実際の時間を確かめましょう。

「駅徒歩12分」のつくり方

マンガの桜ちゃんは、前の話の雨の夜、駅から気になる部屋まで歩いた時間も測っていました。物件概要には「駅徒歩12分」。ところが、実際は18分かかりました。

不動産の広告の分数は、決まった計算で出しています。不動産の表示に関する公正競争規約施行規則は、「徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出」し、「1分未満の端数が生じたときは、1分として算出」すると定めています。たとえば道のりが500mなら、500÷80=6.25なので「徒歩7分」です。

「駅徒歩◯分」の計算のしかた
  1. 起点と着点を決める

    マンション・アパートは建物の出入口から、駅はいつでも使える出入口まで(2022年9月の改正で明文化)。大きな団地などは、駅に最も近い棟と最も遠い棟の両方を「徒歩2分から5分」のように表示します。

  2. 地図の上で道のりを測る

    実際に歩いて測る必要はなく、地図の上で道路に沿った距離を測ります。階段や坂は、真上から見て平らなものとして測ります。

  3. 80mで割って、切り上げる

    道のり÷80m を計算し、1分未満は1分に切り上げます。720mを超えて800m以下なら「徒歩10分」です。

不動産の表示に関する公正競争規約施行規則 第9条第7〜9号、首都圏不動産公正取引協議会の相談事例をもとにまとめました。実際より短いと誤認させる表示は、規約で禁止されています(第23条)。

表示に入っていないもの

首都圏不動産公正取引協議会は、この分数について「信号や踏切の待ち時間、坂道や階段等は考慮しなくてもよい」とし、「広告の表示は目安として捉え、実際に歩いてみることが大切」と案内しています。

駅徒歩の表示に入るもの、入らないもの

入っている

地図で測れる道のり

  • 建物の出入口から駅の出入口までの道路の距離
  • 80mで1分として計算した時間(端数は切り上げ)

入っていない

その日・その時間の歩きやすさ

  • 信号や踏切の待ち時間
  • 駅前・改札の混雑、ホームから改札までの時間
  • 坂道・階段・歩道橋
  • 雨の日の歩きにくさ、明るい道への回り道(第12話)

分速80mは、広告で分数を出すための約束事の値です。人の歩く速さは人によって、場所によって違います。

ちなみに、歩行者用の信号の青の時間は、警視庁によると一般に「歩行速度を秒速1メートル」として渡りきれるよう調整されています。分速にすると60mで、信号を設計するための値ですが、80mより遅い想定です。

数字で見る:募集は「5分」と「10分」が多い

エステートテクノロジーズが、東京都で2026年4〜9月に募集された賃貸を、同じ部屋の重複をまとめて調べたところ、駅徒歩の分数は中央値で7分、10分以内が8割近くでした。分数ごとの件数を見ると、「5分」と「10分」が、その前後よりはっきり多くなっていました。10分の約5.2万戸に対して、11分は約2.2万戸と半分以下です。

駅徒歩の分数ごとの賃貸の募集の数(東京都)
  1. 2.1 1
  2. 3.7 2
  3. 5.5 3
  4. 6.0 4
  5. 7.9 5
  6. 6.0 6
  7. 6.5 7
  8. 5.7 8
  9. 5.0 9
  10. 5.2 10
  11. 2.2 11
  12. 2.5 12
  13. 1.8 13
  14. 1.4 14
  15. 1.5 15
  16. 0.6 16
  17. 0.6 17
  18. 0.6 18
  19. 0.4 19
  20. 0.4 20

単位:万戸
横軸は駅徒歩の分数(1〜20分)。東京都の賃貸の募集(2026年4〜9月、同じ部屋の重複をまとめた住戸単位)。募集時の表示です。
出典:エステートテクノロジーズ調べ

部屋探しのサイトには「駅徒歩5分以内」「10分以内」といった絞り込みの条件があり、ちょうどその内側に入る部屋が目立つ形です(多い理由は、このデータからは分かりません)。11分の部屋は、10分の部屋と実際の歩く時間がほとんど変わらないこともあります。絞り込みの条件を「10分以内」から少し広げると、候補が増えることがあります。

駅から1分遠いと、家賃はどれくらい違う?

同じ調査で、東京23区の15〜40㎡・2011年以降に建った部屋の家賃を比べると、駅から近いほど高く、駅徒歩5分以内の中央値は12.1万円、16分以上は8.8万円でした。1分ごとに見ると、駅から1分遠くなるごとに、およそ2,000円ずつ下がっていました。

駅徒歩の分数別の家賃(東京23区、15〜40㎡、2011年以降築)
  • 5分以内 12.1万円
  • 6〜10分 11.2万円
  • 11〜15分 10.3万円
  • 16分以上 8.8万円

賃貸の募集(2026年4〜9月、住戸単位)の家賃の中央値。広さと築年はそろえましたが、区の違いはならしていません。募集時の家賃で、契約した家賃ではありません。
出典:エステートテクノロジーズ調べ

マンガの桜ちゃんの部屋は、表示は12分でも、雨の夜には18分かかりました。家賃は表示の分数とも関わります。毎日歩く自分にとっての本当の分数を、確かめておく価値があります。

駅からの時間を確かめる5つのコツ

  1. 使う出口から測る

    見るところ:ふだん使う改札・出口から歩く。ホームから改札までの時間も足して考える

    気にしたいサイン:駅が大きく、出口によって距離が違う

  2. 通勤の時間帯に歩く

    見るところ:朝の出勤・夜の帰宅と同じ時間帯に歩く

    気にしたいサイン:昼にしか歩いていない

  3. 信号と踏切

    見るところ:大きな道路の信号、開かずの踏切がないか。待ち時間を測ってみる

    気にしたいサイン:信号待ちだけで数分かかる

  4. 坂道と階段

    見るところ:上り坂や長い階段、歩道橋がないか。帰りが上りになる道は特に

    気にしたいサイン:雨の日や荷物が多い日はつらそう

  5. 雨の日・夜の道

    見るところ:雨の日の駅前の混雑や、夜に選ぶ明るい道(第12話)でどれだけ延びるか

    気にしたいサイン:明るい道を選ぶと大きく遠回り

電車の時間も同じように、物件概要や広告には朝の通勤ラッシュ時の所要時間を書くことになっています(施行規則 第9条第4号)。通勤全体の時間は、駅までの道と電車の両方で考えましょう。

次は内見へ

ネットで部屋を探し、夜の道と駅からの時間も確かめた桜ちゃん。いよいよ次は、部屋の中を見に行く内見です。スーパーや周りの静かさも、内見のときに一緒に確かめていきます。

出典

  • 不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」PDF(施行規則 第9条第4・7〜9号、規約 第23条、確認日:2026-10-14)
  • 首都圏不動産公正取引協議会「徒歩所要時間について」Webページ(確認日:2026-10-14)
  • 警視庁「歩行者横断秒数の延長」Webページ(確認日:2026-10-14)
  • エステートテクノロジーズ調べ:東京都の賃貸の募集情報(2026年4〜9月、同じ部屋の重複をまとめた住戸単位)。募集時の情報で、契約の情報ではありません。