この記事の要点
- 一つの部屋を、複数の不動産会社が紹介できます。駅前の何軒もの店や、ネットのいくつもの広告に、同じ部屋が出ているのはよくあることです。
- 借りる人が払う仲介手数料には、法律にもとづく上限があります。仲介を頼むときに承諾していなければ、家賃0.5か月分+消費税まで。「半額」は、この上限と同じ水準のこともあります。
- 「無料」は、貸す人の側が手数料を負担している場合などがあります。比べるときは手数料だけでなく、初期費用の見積もりの総額と、担当者の対応で比べましょう。
同じ部屋の紙が、3軒のウインドウに
第16話の電話で、すっかり不動産屋さんが怖くなってしまった桜ちゃん。それでも気を取り直して、住みたい街の駅前までやって来ました。ウインドウに貼られた紙に「ネットで見たことない!」と目を輝かせたのもつかの間、隣の店にも、その隣の店にも、同じ部屋の紙が貼られていたのです。
じつはこれ、珍しいことではありません。部屋を貸す人(貸主)や、貸主から募集を任された不動産会社は、ほかの不動産会社にも部屋を紹介してもらって、借りる人を探すことがあります。マンガの3枚の紙は、上の間取り図と家賃が同じで、下の会社の欄だけが違っていました。店先では、こうした「会社の欄だけ違う同じ部屋の紙」を見かけることがあります。
数字で見る:募集の半分は、同じ部屋の広告が2件以上
エステートテクノロジーズが、東京都で2025年10月〜2026年6月に始まった賃貸の募集を、同じ部屋の重複をまとめて調べました。ある住宅情報サイトで、同じ部屋の広告が同時にいくつ載っていたかを数えると、2件以上載っていた募集は49.0%、3件以上は29.0%でした。もう一つの住宅情報サイトでも、2件以上が50.0%、3件以上が31.9%と、ほぼ同じでした。
- 51.0 1件
- 20.0 2件
- 10.3 3件
- 10.6 4〜5件
- 8.1 6件以上
単位:%
2025年10月〜2026年6月に始まった賃貸の募集(同じ部屋の重複をまとめた住戸単位、20万3093件)。一つの住宅情報サイトの中で、掲載の期間が重なっていた広告の数の最大。重なっていた広告は9割以上で会社名(店舗名)が違うので、載せていた店の数の目安になります。別のサイトにだけ載せた店は数えていないので、実際の店の数より少なめです。掲載が1日以下の広告は除いています。
出典:エステートテクノロジーズ調べ
同じ部屋の広告が並ぶのは、それだけ多くの店がその部屋を紹介できるということです。気に入った部屋が見つかったら、どの店に問い合わせても、同じ部屋の話ができる可能性があります。
仲介手数料の上限は、法律で決まっている
それなのに、マンガでは店ごとに手数料の札が違いました。まず、仲介手数料の決まりを確かめておきましょう。
国の告示で、住まいの賃貸の仲介手数料には上限があります(第6話でも紹介しました)。
- 不動産会社が借りる人から受け取れるのは、仲介を頼むときに承諾していなければ、家賃0.5か月分+消費税まで。
- 貸す人と借りる人の両方から受け取る合計は、家賃1か月分+消費税まで。
借りる人から1か月分を受け取れるのは、仲介を頼む時点で、借りる人が承諾している場合です。国土交通省は、依頼のあとで承諾を得ても、この承諾には当たらないとしています。物件の案内が進み、賃貸借の契約を結ぶ日になってから承諾しても足りないとした裁判例もあります(東京地裁 令和元年8月7日判決)。
家賃1か月分
仲介を頼むときに借りる人が承諾した場合の金額
- 承諾があれば、決まりの範囲内
- いくらを払うことに承諾しているのか、最初に確かめる
「半額」
家賃0.5か月分+消費税のことが多い
- 承諾がない場合の上限と同じ水準のこともある
- 「半額」の元になる金額を確かめる
「無料」
貸す人の側が負担している場合など
- 住まいの賃貸では、手数料の合計の上限は家賃1か月分+消費税
- ほかの費用の項目が増えていないか、総額で見る
住まいの賃貸の仲介手数料の上限(国の告示)をもとにまとめました。実際の金額や条件は、不動産会社ごとに確かめてください。
出典:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」第四、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
同じ部屋でも、その会社が貸主から募集を任されている会社なのか、ほかの会社から紹介を受けている会社なのか、貸主からも手数料を受け取るのかで、借りる人の手数料は変わることがあります。手数料が違っても、部屋そのものは同じです。
エステートテクノロジーズの調べでは、同じサイトに同じ部屋の広告が2件以上出た募集のうち、9.2%で、「仲介手数料無料」などと書いた広告と、書いていない広告が混ざっていました(もう一つのサイトの広告で、備考欄などの文字から数えた目安です。書いていない広告が有料とは限りません)。
「無料」「半額」の店を選ぶ前に、確かめたいこと
-
見積もりの総額
見るところ:敷金・礼金・仲介手数料・保証料・鍵の交換・保険など、初期費用の合計(第6話)
気にしたいサイン:手数料は安いのに、ほかの項目が多い
-
任意の費用
見るところ:消毒・24時間サポートなど、付けるかどうか選べる費用か
気にしたいサイン:外せるかを聞いても答えがあいまい
-
手数料の条件
見るところ:「無料」「半額」に条件(来店の予約、特定の物件だけ等)がないか
気にしたいサイン:条件が小さな文字で書かれている
-
取引態様
見るところ:広告の「貸主」「代理」「仲介」の表示(第16話)
気にしたいサイン:表示がない、説明が食い違う
-
担当者の対応
見るところ:質問に答えてくれるか、考える時間をくれるか(第16話)
気にしたいサイン:今日決めるよう急がせる
「ネットで見たことない」は本当?
桜ちゃんは2コマ目で「ネットで見たことない!」と喜びましたが、3軒の店に貼られていた部屋は、ネットにも載っているかもしれません。店先の紙も、ネットの物件ページも、どちらも広告です。
国土交通省の調査では、民間の賃貸住宅に入居した世帯のうち、インターネットで住宅を探した人は62.5%、不動産業者で探した人は42.4%でした(複数回答、第16話)。ネットで探す人も、店に足を運ぶ人も多く、どちらにも同じ部屋が出ていることがあります。ネットで気になった部屋を、近くの別の店で相談してみるのも一つの方法です。
次の話へ
3軒のうち、どこに入るかで立ち止まってしまった桜ちゃん。次の話では、ついに不動産屋さんのドアを開けます。お店の中で待っていたのは……?
出典
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年国土交通省告示第949号で最終改正)第四 大阪府による全文(確認日:2026-10-18)
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」PDF(告示第四関係、PDF p44〜45、確認日:2026-10-18)
- 不動産適正取引推進機構「RETIO」No.120(2021年冬号)東京地裁 令和元年8月7日判決の紹介 PDF(p134〜140、確認日:2026-10-18)
- 国土交通省「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書」2026年7月 PDF(問5、PDF p302、確認日:2026-10-17)
- 不動産公正取引協議会連合会「不動産広告の読み方・見方」PDF(取引態様と仲介手数料の上限、PDF p6、確認日:2026-10-18)
- エステートテクノロジーズ調べ:東京都の賃貸の募集情報(2025年10月〜2026年6月に始まった募集、同じ部屋の重複をまとめた住戸単位)。掲載の情報で、契約の情報ではありません。