この記事の要点

  • 賃貸の部屋で壁に棚を付ける(ネジ穴を開ける)なら、先に大家さんや管理会社に相談しましょう。国土交通省の賃貸住宅標準契約書でも、貸主の書面による承諾なしに部屋の改造や模様替えをしないことになっています。
  • 国土交通省のガイドラインでは、ポスターを留める画鋲の穴は「通常の損耗」、重い物を掛けるための**ネジ穴(下地ボードの張替えが必要な程度)は「通常の使用を超えるもの」**の例とされています。
  • 相談して付けることになったら、何を・どこに・どう付けるか、退去時にどうするかを書面(メールなど記録に残る形)で決めておくと、退去時のトラブルを防げます。

大家が「長く住んでほしい」と思う理由

マンガで蓮さんは、住んでほしい人を「部屋を大切にして、長く住んでくれる人」と答えました。

貸す側にとって、入居者が退去すると、次の人が決まるまで家賃が入らない期間ができ、部屋を整える費用や募集の手間もかかります。だから多くの大家さんは、気に入って長く住んでくれる人を歓迎します。

ただ、部屋を貸せる状態に保つことも大家さんの仕事です。賃貸用の空き家は全国で約444万戸あり、20年前より増えています。

賃貸用の空き家の数(全国)
  1. 3,675 2003年
  2. 4,127 2008年
  3. 4,292 2013年
  4. 4,327 2018年
  5. 4,436 2023年

単位:千戸
5年ごとの調査による推計。2023年は空き家全体(約900万戸)の49.3%にあたります。
出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果の概要」

では、実際にどれくらいの期間住む人が多いのでしょうか。賃貸住宅の管理会社への調査では、2023年度の平均居住期間は、単身で約3年3か月、ファミリーで約5年3か月でした。

賃貸住宅の平均居住期間(2023年度・全国)
  • 単身 39.3か月
  • 全体 50.2か月
  • ファミリー 63.0か月

管理会社への調査(699社が回答)。入居者に聞いた値ではありません。
出典:日本賃貸住宅管理協会「第28回 日管協短観」

数字で見る:退去時の「原状回復」の相談は毎年1万3千件以上

部屋に手を入れるときに気にしたいのが、退去するときの原状回復(借りた部屋を、決められた状態に戻すこと)です。

国民生活センターによると、全国の消費生活センター等に寄せられた原状回復の相談は、2025年度で14,711件でした。

賃貸住宅の原状回復に関する相談件数
  1. 13,273 2023年度
  2. 13,312 2024年度
  3. 14,711 2025年度

単位:件
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された相談。消費生活センター等からの経由相談は含みません。2023年2月24日に集計方法が変わったため、それ以前の件数とは比べられません。
出典:国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブル」

集計方法が変わる前の2017〜2021年度も、原状回復の相談は毎年1万3千〜4千件ほどあり、賃貸住宅に関する相談の約4割を占めていました(国民生活センター、2023年2月公表)。退去時の費用は、それだけ揉めやすいところです。

画鋲の穴とネジ穴は、扱いが違う

マンガの3コマ目で蓮さんが気にしたのは、棚を留めるネジでした。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、壁の穴を次のように分けています。

壁に付けるもので、穴の扱いが変わる
3つに分けた壁のイラスト。左は画鋲で留めたポスターとカレンダー、中央は金具とネジで壁に取り付けた棚、右は床に置いた棚と床と天井で突っ張る棚。

画鋲・ピンの穴

通常の損耗とされる例

  • ポスターやカレンダーを留める程度の穴
  • 下地ボードの張替えが不要な程度
  • 通常の生活の範囲と考えられている

重い物を掛けるくぎ穴・ネジ穴

通常の使用を超えるとされる例

  • 棚など重量物を掛けるために開けた穴
  • 下地ボードの張替えが必要な程度
  • 借りる人の負担になることがある。先に相談を

穴を開けない方法

壁に穴を残さない

  • 床に置く棚
  • 床と天井で突っ張るタイプの棚(天井や床に跡が付かないか確認)
  • 迷ったら、これも先に相談を

ガイドラインは一般的な目安で、法的な拘束力はありません。実際の扱いは契約の内容(特約を含む)で決まります。
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」別表1

ガイドラインは、地震に備えた家具の転倒防止についても「予め、賃貸人の承諾、または、くぎやネジを使用しない方法等の検討が考えられる」としています。ネジを使う前に貸す側へ相談する、という考え方です。

棚を付けたいときの相談の手順

国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」では、借りる人は貸す人の書面による承諾なしに、部屋の改造や模様替えをしないことになっています。また、DIY型賃貸借のガイドブックは、入居中に工事をしたいときは「まずは貸主へ相談」としています。

壁に棚を付けたいときの5つの手順
  1. 契約書を確かめる

    部屋の改造・模様替えや、原状回復について書かれた条項を読みます。特約で決まっていることもあります。

  2. 大家さん・管理会社に相談する

    何を、どこに、どうやって付けたいかを伝えます。棚の大きさや写真、付けたい場所が分かると話が早く進みます。窓口が管理会社のことも多いです。

  3. 取り決めを書面で残す

    付けてよいか、費用は誰が持つか、退去時に外して元に戻すのか、そのまま残してよいのかを決め、メールなど記録に残る形でやりとりします。

  4. 付ける前に写真を撮る

    工事の前の壁の状態を写真に残しておくと、退去時に確かめやすくなります。

  5. 退去時は取り決めどおりに

    決めたとおりに外す・残すを行い、精算します。

出典:国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)」第8条と解説コメント、「DIY型賃貸借のすすめ」。手順は一般的な流れで、実際の進め方は貸主・管理会社との契約によります。

相談するときの注意

  • 自己判断で付けない:「小さなネジなら大丈夫」と決めつけず、先に聞きましょう。
  • 口約束で終わらせない:担当者が替わっても分かるよう、メールなど記録に残る形にします。
  • 退去時のことも決めておく:外して元に戻すのか、そのまま残してよいのかで、退去時の費用が変わります。
  • 相談先を確かめる:大家さんが直接やりとりする物件もあれば、管理会社が窓口の物件もあります。

借りる人と貸す人、同じ「長く住む」でも

借りる人にとって「長く住む」は、自分好みに楽しく暮らすこと。貸す人にとっては、部屋を大切に使ってもらうことでもあります。目指すところは同じなので、先に話しておけば、どちらにとっても気持ちのよい部屋になります。

前の話では、桜ちゃんが蓮さんの「大家さん」の顔を初めて知りました(第1話「内見、どこ見る?」)。

出典

  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」平成23年8月 PDF(別表1「壁、天井」、確認日:2026-10-11)
  • 国土交通省「賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・家賃債務保証業者型)」PDF(第8条と解説コメント、確認日:2026-10-11)
  • 国土交通省「DIY型賃貸借のすすめ」PDF(確認日:2026-10-11)
  • 国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブル」(2026年7月31日更新)Webページ(確認日:2026-10-11)
  • 国民生活センター「住み始める時から、『いつか出ていく時』に備えておこう!」2023年2月1日 PDF(確認日:2026-10-11)
  • 日本賃貸住宅管理協会「第28回 日管協短観」2024年11月 PDF(p.18 平均居住期間、確認日:2026-10-11)
  • 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果の概要」2024年9月 PDF(表2-1、確認日:2026-10-11)